基金拠出型医療法人 眞仁会

腎臓病について

ABOUT CKD-MBD

CKD-MBDとは

CKDはChronic Kidney Diseaseの略で、慢性腎臓病のことです。
MBDはMineral and Bone Disorderの略で、ミネラル骨代謝異常のことです。
したがって、CKD-MBDは「慢性腎臓病に伴う、ミネラル骨代謝異常」と訳されます。
CKD-MBDは、
①カルシウム・リン・副甲状腺ホルモンの代謝異常、ビタミンDの代謝異常
②骨代謝異常
③血管,軟部組織の石灰化
の3つが組み合わさった全身性疾患で、生命予後に影響を及ぼすため、重要視されています。

CKD-MBDの検査

CKD-MBDに関連する検査項目で、通常の血液検査で測定しているものは、カルシウム(Ca)、リン(P)、副甲状腺ホルモン(PTH)です。
これらの基準値は、日本透析医学会のガイドラインでは、以下のようになっています。
Ca 8.4~10.0mg/dl
P 3.5~6.0mg/dl
iPTH 60~240 pg/ml(wPTH 35 ~ 150 pg/ml)

※ アルブミン(Alb)が低い場合は、次の式でCa値を補正する必要があります。
(Alb 4.0g/dL未満の場合)
補正Ca値 = Ca + (4 - Alb)

CKD-MBDの症状

CPTHの過剰な分泌は、骨から血液中へのカルシウム吸収を引き起こし、骨がもろくなる「線維性骨炎」となり、骨痛や骨変形、病的骨折などの原因となります。また、血液中のカルシウム、リンの濃度が高くなると、さまざまな場所へカルシウム沈着(異所性石灰化)し、動脈硬化や弁膜症、関節炎などを引き起こします。 動脈硬化は狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、下肢の閉塞性動脈硬化症などを引き起こすため、生命予後との関係が深く、大きな問題となります。

CKD-MBDの治療

カルシウム、リン、PTHの中で、最も生命予後を悪くするのはリンが高いことです。リンの値が7以上になると死亡リスクは約1.4倍、9以上になると約2倍に上昇すると言われています。
リン値を下げるためには、まずは十分な透析を行ったうえで、食事療法でのリン制限が基本となりますが、ほとんどの方はリン吸着薬の内服も必要になります。また、カルシウム、PTHの値も基準値内にコントロールするため、データをみながら活性型ビタミン製剤やカルシウム受動態作動薬を使用していきます。

【薬物療法】

◇リン吸着薬

リン吸着薬は大きく、カルシウム含有と非含有のものに分かれます。カルシウム含有のものは内服量が多いとカルシウム値が上昇しすぎて、石灰化を引き起こすことがあります。カルシウムの値や、効果、副作用、内服のしやすさなどを考慮して選択します。
カルシウム含有: 炭酸カルシウム (カルタンR)
カルシウム非含有:塩酸セベラマー (レナジェルR、フォスブロックR)
炭酸ランタン (ホスレノールR)
ビキサロマー (キックリンR)
クエン酸第二鉄 (リオナR)
スクロオキシ水酸化鉄 (ピートルR)

◇活性型ビタミンD製剤

ビタミンDは肝臓と腎臓で活性化されて作用できるようになるため、腎機能が低下していると、腎臓での活性化がなされず、活性型ビタミンDの低下を引き起こします。そうすると腸管からのカルシウム吸収が低下し、血清カルシウムの低下と、それに伴うPTHの上昇が生じます。PTHが高くなることを二次性副甲状腺機能亢進症と言いますが、その治療として活性型ビタミンD製剤が必要になります。製剤としては内服薬と注射薬があります。
活性型ビタミンD製剤を使用するとPTHは下がりますが、カルシウム、リンを高くする作用もありますので、3つのデータをみながら、投与量を調節する必要があります。
内服薬:アルファカルシドール (アルファロールR、ワンアルファR)
    カルシトリオール (ロカルトロールR)
    ファレカルシトリオール (フルスタンR、ホーネルR)
注射薬:マキサカルシトール (オキサロールR)
    カルシトリオール (ロカルトロールR)

◇カルシウム受容体作動薬

二次性副甲状腺機能亢進症の治療として、PTHが高い場合に使用します。 PTHを下げますが、カルシウムの低下作用もありますので、活性型ビタミンD製剤を使用することで、カルシウム値が高くなりすぎるような場合に選択されます。内服薬と注射薬があります。
内服薬:シナカルセト(レグパラR)
エボカルセト(オルケディアR)
注射薬:エテルカルセチド(パーサビブR)

【手術療法】

次性副甲状腺機能亢進症が続くと副甲状腺の腫大が進み、薬物療法ではコントロールが困難になることがあります。そのような場合には、副甲状腺摘出術、もしくは腫大した副甲状腺にエタノールなどを注入する治療法があります。ただ、カルシウム受容体作動薬が使われるようになってからは、手術が必要になるケースはほとんどみられなくなりました。