基金拠出型医療法人 眞仁会

透析について

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腎代替療法の種類と療法選択

腎代替療法について

腎臓の機能は血液検査のクレアチニンや尿素窒素(BUN)から算出されますが、腎臓機能が正常の1/10~1/20(eGFRで5~10ml/min/1.73m3)まで低下し、腎臓機能低下による症状(尿毒症症状 表1参照)が出現してくるとこのままでは生命を維持すること自体が難しくなるため、腎代替療法を開始する必要があると判断します。腎機能がそこまで落ちていなくても尿毒症症状が強く出ていれば総合的判断で腎代替療法を開始する事もあります。糖尿病による糖尿病性腎臓病や高血圧や動脈硬化による腎硬化症、慢性腎炎など長い時間をかけて腎機能が悪化する慢性腎臓病(CKD)の場合、残念ながら腎臓機能低下は不可逆的で回復しない場合がほとんどですので、腎代替療法と一生付き合って行く必要があります。

表1.尿毒症症状

体液貯留浮腫、胸水、腹水、心外膜液貯留、肺水腫
体液異常高度の低ナトリウム血症、高カリウム血症、低カルシウム血症、高リン血症、代謝性アシドーシス
消化器症状食欲不振、悪心・嘔吐、下痢
循環器症状心不全、不整脈
神経症状中枢神経障害:意識障害、不随意運動、睡眠障害、末梢神経障害:かゆみ、しびれ
血液異常高度の腎性貧血、出血傾向
視力異常視力低下、網膜出血症状、網膜剥離症状

腎代替療法は文字通り腎臓機能を何らかの方法で肩代わりする治療で、大きく分けて透析療法腎移植があります。それぞれの方法に特徴やメリット・デメリットがありますので、大まかに説明します。透析療法にはおよそ1回4時間を週3回ずつ、血液を体外の透析器を用いてきれいにする血液透析と1日数回、おなかの中に透析用の液を注入して数時間後に排出することを繰りかえして透析を行う腹膜透析があり、これらは腎臓の機能のうち低液量やミネラルの調節・老廃物の排泄を補う事ができます。腎移植は健康な親族(配偶者を含む)の方の2つの腎臓のうちの1つを提供してもらう生体腎移植と、脳死や心臓死になられた方から腎臓の提供を受ける献腎移植があり、腎移植を受けた後は免疫抑制薬などを服用する必要はありますが、腎臓のほぼ全ての機能が補われます。

(1)血液透析

日本で最も普及している腎代替療法で、眞仁会でも主にこの方法で治療を行っています。全国津々浦々に血液透析を行える施設があること、腹膜透析のように患者さん自身が毎日自分で行わなければならない手技がほとんどないこと、また腎移植のように腎臓の提供者を探す必要がないこと、などが普及している要因として挙げられます。 一方で、本来の腎臓に比べると透析で除去できる尿毒症物質には限界があり、分子量の大きな物質が取り切れないことからアミロイド沈着などの透析特有の長期合併症があること、食事制限が厳しく、必要となる薬剤も多くなること、週3回と頻回の通院が必要であること、バスキュラーアクセスと呼ばれる血液透析に必要な血管をつくり維持しなければならないことなどが、短所として挙げられます。血液透析の発展形としてより分子用の大きい尿毒症物質を除去でき、長期合併症が起こりにくい血液濾過透析も近年行われるようになっており、眞仁会でも比較的若い患者さんを中心にこの方法が採用されています。

(2)腹膜透析

血液透析ほど普及していませんが、腹膜透析は概ね月に1~2回と通院回数が少なくて済む、透析液の交換時間を自分の都合で多少融通できるなど血液透析に比べると生活の自由度が高く、時間をかけて毒素や水分の除去を行うため体、とりわけ循環器系への負担が軽い、といった長所が挙げられます。 一方、食事制限は血液透析よりは緩いとは言えやはりありますし、透析固有の合併症、多くの投薬が必要であるといった血液透析と同じ負担があるほかに、透析液の交換を1日に数回自分で行わなければならず血液透析に比べて手間がかかること、カテーテル感染や腹膜炎といった感染症を起こしやすいこと、腹膜の機能は経時的に落ちてしまうことや無理に延長すると被のう性腹膜硬化症といった重篤な合併症を生じる危険がでてくるため継続できる期間が5~8年と短い、といった短所があります。
なお腹膜透析は現在眞仁会では行っておりません。

(3)腎移植

腎代替療法の中でも最も生活の自由度が高く、良好な生命予後が期待できる治療方法です。なかなか普及しないのは、移植には腎臓の提供者が必要であることであり、生体腎移植では健康な親族の方にメスを入れて腎臓を提供していただく必要があり、なかなかドナーが見つからないこと。また、献腎移植については、日本ではご遺体を傷つける事への強い抵抗感などから諸外国に比べて臓器提供が非常に少なく、献腎移植を希望しても、腎移植をうけるまでには10数年にわたる長い待機期間があり、その間は透析を受けながら過ごさなければならないという問題があります。眞仁会では移植は行えないため、移植希望者には実際に移植医療を行っている病院へ紹介して生体腎移植を受けて頂いたり、献腎移植登録をしてもらっています。

これまでご説明した腎代替療法の中でどの治療方法が1番ということはなく、また一度選択をしたら変えられないと言うこともありません。眞仁会のクリニックに来られている患者さんは血液透析を選択されている状態ですが、変更の希望がある時は遠慮無く担当の医師や医療スタッフにお申し出ください。