BATON一覧バトンで繫ぐ私の透析看護
「諦めず、期待を押し付けず、寄り添い、支えていくこと」K・Nさん
K・Nさんは、看護師としての初めての職場で透析看護と出会い、それ以後透析看護に魅了され現在も元気いっぱいパワフルに眞仁会の透析看護を牽引してくれる存在です。
透析看護に携わり25年になります。きっかけは、新卒で総合病院に就職し透析室配属になったことでした。そこで10年働き、透析導入期と終末期、腹膜透析の患者さんと主にかかわりました。院内ローテーションで別の部署での看護も経験しましたが、透析看護のように長期にかかわり続ける看護は他にない、やっぱり透析看護がいい!と思い、総合病院を辞め、クリニックに再就職しました。
クリニックに再就職して一番驚いたのは入院していてもおかしくない患者さんが外来通院で頑張られていたことでした。総合病院ではあまり経験することができなかった、患者さんの透析しながらの生活を実感しました。そして熱心にかかわっている先輩看護師さんと長期かかわる中で育まれる患者さんとの信頼関係の深さに、透析看護の魅力を再認識する思いでした。
再就職してしばらくして、私はA氏を受け持ちました。A氏は独居で認知症を患っていました。家族とは疎遠で連絡を取っても拒否されてしまう状況でした。介護保険を利用して定期的に通院することはできていましたが、食事や飲水量の指導をしてもなかなか覚えてもらえず、体重は増え放題、血液データも一向に改善しません。受け持ち当初、正直なところ「大変な患者さんだな、今後も自分自身で管理するのは難しいのではないか?」と思い、いずれ近いうちに独居での通院透析は限界が来るのだろう、いくら指導しても理解してもらえないし…と諦めの心境でした。そんな時、大先輩の看護師から「まあ、期待しすぎず、諦めずにね」と言われ、私はハッとしました。そうか、私はA氏に私が望む姿を期待していたんだ!そして自分の思い通りに管理してくれないA氏に対して苛立ちを感じていたんだと気が付かされました。指導も説明も自分本位だったのかもしれない…と振り返りました。そしてA氏の気持ちに寄り添い、できるまで何度でも、ともに考えていけばいいのだと思いなおしました。それから私は諦めずにベッドサイドに足を運び、A氏と語り、繰り返しかかわるようになりました。うまくいったりいかなかったり、時間はかかりましたがA氏は自分なりに何に注意しなければならないかを理解され、時には体重増加を抑え、2年間一度も入院することもなく独居での在宅生活を送ることができました。
一生続けていかなければならない治療と向き合い、時には否定しながら、でも辞めることのできない、そんな患者さんの想いに「諦めず、期待を押し付けず、寄り添い、支えていくこと」、それが今でも私が大切にしている透析看護です。
総合病院に勤務していたころ、超長期透析患者さんに「看護師にどのようなことを求めますか」と尋ねたことがあります。その方は「辞めないで続けてほしい」とおっしゃいました。「この数十年、受け持ち看護師は何人も代わり、私をずっと知っていてくれる人は数少ない」と。透析治療には終わりがありません。生涯にわたる治療を続けてきた、そしてこれからも続けなければならない、そんな「自分をわかって欲しい」という気持ち、それこそが患者さんが求めているものではないか、と今でも思っています。